・はじめに♪
YouTubeやサブスクでインディーズバンドの開拓をしていると、まだ人にあまり知られていない最高にカッコ良いバンドを発掘して1人ニヤニヤが止まらくなることがある。
で、そのときに思うのが、
このカッコ良いバンドを早く''皆に知ってもらいたい''という気持ちと、''自分だけのモノにしたい''という矛盾した2つの感情である。
こういった複雑な2つの思いが交錯してしまう経験は、きっと私だけじゃなく多くの人が味わったことがあるはずだ。
何故そのような気持ちになってしまうのだろうか?
自分が思うにその大きな理由は、
「こんなカッコ良いバンドを自分だけが知っているんだ!」という優越感に浸りたいのと、
皆に知られて人気になることでバンドの方向性が変わってしまうんじゃないかという恐れからだと思う。
・''今''だから書ける歌詞
ここ最近、私がどっぷりと沼に浸かっているインディーズバンドがある。
『時速36km』という東京江古田で結成された4人組ロックバンドだ。※(以下、時速)
このバンドを初めて知ったとき私はまさしく、前述で述べた矛盾した気持ちに襲われた。
『七月七日通り』。私が初めて聴いた時速の楽曲。久々にロックンロールを聴いて心が熱くなった。
哀愁が漂うノスタルジックなサウンドに、ボーカルの叫びにも近い感情を揺さぶる歌声。めちゃくちゃ痺れた。
そして何よりも私は、彼らの綴る歌詞に心を掴まれた。
『胸の高鳴りは確かに今だってあんのさ それにぼけていられた青春 シラフじゃ受けきれない今 憧れは時に無力感に化けんだ それすらもヒロイックな妄想の材料に化けるけど 悲しみ湛えて打ちひしがれて でもなんとかやってる風」を誰もが装うだけ。』 作詞:仲川慎之介
聴いたときこれは間違いなく''今''にしか書けない歌詞だと思った。
売れてからではこの歌詞は絶対に書けない。現状に満足していない、満たされていない気持ちがあるからこそ書ける歌詞だ。
現実と夢の狭間で揺れ動く心。大人になっていくことへの焦燥感や葛藤。もがき苦しんでる感じが聴いていて痛いほど伝わってきた。
そして、その歌詞からは絶対このままでは終わらない、這い上がってやるんだという気概みたいなものがヒシヒシと伝わってきて、聴く度に自分の沈んだ気持ちを奮い立たせてくれる。
・リスナーに媚びない音楽
ついこの間YouTubeにアップされた新曲もめちゃくちゃに痺れる楽曲だった。『動物的な暮らし』という曲。
聴いてもらえば分かるんだけど、時速の音楽って間違いなく今の流行りのサウンドではない。
聴いていて踊れるわけでもなければ、メロディーがキャッチーな訳でもないし、歌詞も大衆受けするようなものではない。
でも、そんな彼らのどこまでもリアルな現実を歌った歌詞と、切迫感や焦燥感のあるサウンドが、聞く人の心の奥深くまで突き刺してくるのだ。
バンドってどうしても人気が出ると音楽性が変わってしまうもので、売れれば売れるほどメロディがキャッチーになったりノリの良いポップな曲が増えたりする。
けど、時速の音楽を聴いてると自分達のロックンロールを最後まで貫いてくれるような気がしてくるのだ。
・まとめ
この記事のタイトルで『売れて欲しいけど売れて欲しくない』なんて言ったけど、
やっぱり時速36には売れてほしい。
時代に迎合せず、リスナーに媚びない強い芯を持った彼らの楽曲を、もっと沢山の人に聴いてもらいたい。
私は本当に良い音楽ってのはジャンルや流行りなんて関係ないと思ってる。きっと時速の楽曲は多く邦ロックリスナーから共感を得るような気がしている。
2020年の彼らの躍進に期待したい。